「またライブで会いましょう」という魔法の言葉


8月になるといつも、2011年のツアーファイナルのことを思い出す。
「またライブで会いましょう」と初めて黒田さんが言わずにステージを降りたあの日。

 

あの太陽が、この世界を照らし続けるように…を引っさげたツアー。私はこのツアーで黒田さんが歌えなくなる場面に遭遇した。名古屋ガイシホール。STAYを歌う黒田さんは、嗚咽を漏らして言葉に詰まって。演奏の音だけが聴こえた。小渕さんは黒田さんが歌いだすのを待ち続けて、曲が終わった後にタオルを差し出していた。

「あぁ、ふたりの関係性って素敵だな。」その時はそういう風に思った。今思えば活動休止のことが頭をよぎったのだろうか…などと憶測で話をすることはできるけれど、真相はわからない。あんなにも切なそうに歌う黒田さんを観たのが初めてだった私はめちゃくちゃ動揺した。


「彼らが足を止める日がくるなんて」


いつだって当たり前のように1年に1回ツアーをして、新曲を一番最初に聴かせてくれる。当たり前のようにCDが発売される。…そんなふうに私たちに向かって歌を歌ってくれる彼らが「歌うのを一度やめます」とステージを降りた。もちろんまた歌い続けるための選択だというのは分かっていたし、彼らがパワーアップするための活動休止だというのは念頭に置いた上で、やっぱり全てにおいて当然のようにあることなんてひとつもないのだと実感した。

 

当たり前だと思っていた日常は全く当たり前ではなくて、その日常はかけがえのない毎日で、「特別だったこと」を失ってから気づいた。人間っていうのは本当に愚かな生き物だなと思った。

 

それくらいに、衝撃だった。ポカリ、と空いた穴がとてつもなく大きくて 彼らの歌声が聴けないということは、私にとってこんなにも大きな出来事なのか…と。

 

ふたりが帰ってきたときに「帰ってきてよかった」と思ってもらえるように、待ち続けたいなぁと思っていたけれど、「もし、」は止まらなかった。…ふたりもきっと一緒だったんだろうなぁ。「もし、前みたいに歌えなかったら」「もし、誰も待っていなかったら」

 

彼らの葛藤は私には到底わかるようなものではないけれど、「もう歌をやめよう」と思ったという言葉だけでどれほどの気持ちだったのかが伝わってきて心臓の奥がキュっと締め付けられた。あんなにも愛おしそうに歌を歌う人が「やめよう」と思うってよっぽどなのでは…「大好きだった音楽が僕から離れていくようなそんな気がしたんです」あぁ、私達にも原因があったのでは…もはや負のスパイラル。彼らの言葉だけを信じよう、と私たちは楽曲の素敵なところを語り合い、彼らを待ち続けた。とにかく体調が一番。彼らが笑顔でいられることが一番、とみんなで毎日過ごしていたことをつい最近のように思い出す。

 

彼らが「また歌を歌おう」と腹を据えて、覚悟を決めてステージに立ってくれたあの万博のライブから、先週の愛媛のライブまで。

ツアーが始まるたびに「もしかしたら、このツアーでふたりの歌を聴くのは最後かもしれない」と心のどこかで思っていた。不謹慎だし、怒られるかもしれないけれど、やっぱり心のどこかで「彼らの負担になっていたらどうしよう」とか「歌うのがしんどいと思っていたらどうしよう」とか思っていることもあった。我ながらネガティブである。

 

だからこそ心ツアーでは、何よりも誰よりも黒田さんが楽しそうに歌を歌っている。それが嬉しかったんです。

 


彼らが「またライブで会いましょう」とステージを降りてくれるたびにホッとした。あぁ、よかった。約束をしてくれる。と。次もまたここで、会えるんだ。そう思えば嬉しくて嬉しくて仕方なかったんです。

 


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「来年も 再来年も 10年先も。…明日もよろしくー!」

「みんなとずーーーーっと先の未来を一緒に見ていたい。」


小渕さんの口から"未来"を想像できるような、そんな言葉が沢山出てくるたびに嬉しかった去年のツアー。小渕さんの目には、コブクロとして歌いつづける未来が映っていてその未来を見据える、昔からずっと続いている道を一緒に歩かせてもらっているようなそんな気分になって、あぁ嬉しいなぁとその言葉を噛みしめていた。
小渕さんの"明日もよろしく"は、いつもありがとう、愛していますに聴こえるし、マイクを通さない生声の「また会いに来てくれる人ー!」はふたりとの約束みたいで嬉しかった。


2017年、8月10日、11日。愛媛ひめぎんホール。「20周年に向けてガツンといきますよ!」と笑う小渕さんに、ニヤニヤしながら「…小渕さん、愛媛のみんなが宮崎に乗っていける船ってあるんですか?フェリーとか」と黒田さんが話し始めた。 「俺は、この後偉い人に怒られるねん!!!!いややけど!!!!でも!!!!!ねぇ、小渕さん、みんなが宮崎に行けるフェリーは「おまえ、ほんっまにやめとけ。それ以上はあかん!」

「箱はね、押さえてますよ。フフフ…!」

という具合に、それはそれは嬉しそうに未来の話をするのだ。

そういえば、20周年の話が出てくると、「みんなー、20周年何するー?何してほしいー?」と言ってくれたんだった。
「地元に歌いいに来てください」というファンに「ホールや場所さえあれば、どこにだって歌いに行くよ」と言ってくれたんだった。

黒田さんが笑いながら来年のイベントをほのめかしている。私は、それが嬉しくて仕方なかった。「次」があるという当たり前ではない幸せと、今と未来が繋がっているという事実が。
あぁ、もう心配ないなぁ。ずっとずっと先の未来が黒田さんにもちゃんと見えている。あぁあの全身全霊の歌声は、ステージにもう一度立つという覚悟なんだ、と。

 

いつだって私の心を震わせて、立ち尽くしたまま動けなくなるのはふたりの歌声だし。あぁ、この言葉を聴きにここまできたんだと思うのは紛れもなくふたりの言葉だ。
声の重なりに身震いするのも、歌詞の美しさに圧倒されるのも。心の隣にそっと寄り添ってくれるのも、何気ない日常を彩ってくれるのも、彼らの、歌だ。声だ。笑顔だ。あぁ、そうだったなぁ。10年間何回支えてもらっただろう。何回救ってもらっただろう。いつだってライブに行くたびに彼らに恋をする。何度だって呆れるくらい恋をする。

 

 「次はどんなことをしようか」「また会いましょう」    

 

それは100%実現されるなんて確証なんてない。


あの日、すべては当たり前ではないということを目の当たりにしたからこそ、その言葉を何度も噛みしめる。彼らとの未来の約束、未来のチケットは、私の心のお守りみたいな存在になってくれる。大げさなんかじゃない。本当に、いつもいつも救われています。今と未来が繋がっている。それがどれほどしあわせなことか。気づかせてくれたのは彼らだから。

ふたりに会える日までに、格好いい自分でいたいよな、目の前にいるひとたちが歌を歌っていることを当たり前だとあしらうような人ではいたくないよな、とそんな風に思うのです。

 

歌おうと拳をぶつけあって声を合わせて。またステージに立ってくれてありがとう。
"ソロという選択肢はない。コブクロが終わるときは僕も終わるとき"

ふたりで帰ってきてくれてありがとう。またライブで会いましょう、はわたしたちとコブクロのふたりとを繋ぐ一番の未来の約束。そして何よりわたしたちにとって大切な魔法の言葉。いつだってしあわせをありがとう。大好きです

 

…暗くなってしまった。そんなつもりはなかった。(すみません、暗くて。)ただ、愛媛での発言が嬉しかったから書いてみました。

しっかりお金も貯めておくので早めにスケジュール教えてね。(笑)

 


今回の「心」ツアーはいつも以上にふたりのアイコンタクトが多い気がするし、いろんな意味で自由だなぁ手探りだなぁ毎回違うなぁと思う。手触りがなんとなく昔のなつかしいツアーに似ているような気がする。ふたりが醸し出す、ふたりを纏う空気がどことなくなつかしい。20周年を前に原点回帰をしているのだなぁと私は勝手に思っています。

 

まだ参加していないみんなも、きっと。またふたりのことを好きになって帰ってくるし、ふたりと未来の約束をして「よし、明日からも頑張ろう」って思えると思う。またみんなの初参加のツアーが終わった後に、たくさんお話がしたいなぁ。それもまた、楽しみの一つです。

 

終わりかたがわからなくなってしまった…次は「結成20周年。コブクロはいいぞ!」か「シングル”心”の歌詞を読み解く」か「昔のオフィシャルブックを読んだ」のどれかの記事を書こうと思います。いつになるかはわかりませんが…必ず。笑 愛媛のことも書きたいんだけれどねぇ…!